システマ無料体験2日目の記録である。
システマは場所を選ばない
前回参加した体育館に向こう途中、ベンチに座っているリーダーを見つける。
「あ、どうも」
リーダーの横に座ると、リーダーはこう切り出した。
「今日は体育館(の予約が)取れなかった。」
「え?じゃあもう今日は無しですか?」
「いやいや、ここでやるんだよ。元々軍隊の訓練だしね。」
「ええっ?ここすか?」
驚いたのは、そこが体育館に行くまでの市営施設のロビーだったからだ。
「1歩で吸い、1歩で吐くやつね。フー、ハー!」
始まった・・・2人の状態で本日のトレーニングがいきなり始まった。
前回のように、1歩で呼吸、2歩分呼吸、3歩分呼吸と増やしていく。
フロアをぐるぐる周る。やっているうちに前回も参加していた女性が入ってきた。
今日は何故か、昔は美人だったんだろうなぁという気品を感じる。(昔は…は余計であるが)
6歩まで増えたところでリーダーが軌道から抜けて外へ向かって歩いて行った。
ちょうどスペースシャトルが地球を周ってから宇宙空間へ放たれるかのように。
「どこ行くんです?」
「事務員がこっち見てるから・・・外に行く。」
苦笑いしながらリーダーの後を追う。
もう一人、前回も参加していた肉付きの良いおっさんが加わってきた。
外と言ってもエントランスのドアの前である。非常に目立つ上迷惑感が否めない。
10歩までカウントアップした後、何歩まで無呼吸で行けるか限界を見つけろと言われる。
100歩ほどになったところで意識が遠のいていく気がしたので呼吸を再開した。
〇〇さんは114歩言ってたぞ!と誰ぞわからない話を持ってきて僕らを鼓舞してくる。
女性が120歩、肉付きの良いおっさん80歩、リーダーは何故かの非公開。
女性が何度かトライしたが、最初だけ120秒で後はどんどんもたなくなっていったと話すと、それはよくないとリーダーに言われていた。通常、身体が慣れて増えていくのだそうだが、もたなくなってしまったということは疲労が回復していないから1回1回のリカバリがきちんとできていないとのことである。やる気の問題がでかいんじゃないかと思ったが当然黙っておいた。
しばらくクールダウンと称してブラブラと歩き回る。人にぶつからないように動線を見て人との距離を自然に避けるように動けという指示を受ける。
野外で裸足になってのトレーニング
「今日は全部で4人っぽいからもう移動する。泥がついてもいいよな?」
リーダーがそう言うのだから頷くしかなく、土の方へ歩いていく。
そして裸足になった。女性も普通に裸足になる。
しかし肉付きの良いおっさんは裸足になっていない。
自分も裸足になってみたが余りに痛くてしばらくしてクロックスを履きなおす。
我ながらこれは情けないが無理をすることもなかろう。
まず1人が目を瞑った状態になる。
3人はコツンと触る程度に拳を当てる。
リーダーは股間もOKと言っているが流石にそこへは誰も触れない・・・。
次に拳にスイカ程の大きなグローブをつけていると仮定して、その人がパンチを繰り出すのに対して急な動きではなく、流れるような無駄のない動きで間合いを確保しつつ避けるというワークが始まる。
リーダーのパンチを避けるのが遅れ、
「はい当たったー!当たってるぞ!当たってるぞ!」と何度も指摘される。
(実際は当たっておらず、仮想グローブが実在していたら当たっているぞという意味)
次に眼を瞑ったまま3人の位置を気配で探って触るというトレーニングが始まる。動かないようにして音を完全に消すと、リーダーも全然捕まえられていない様子。
なかなか胡散臭い漫画のようなトレーニングがツボる。
そして、更に胡散臭さが加速し始めた。
両手を大きく上げて上から押し付けるようなジェスチャーをリーダーが女性にすると・・・
「はい、わかる?」
「はい!」
なんと上から押し付けるその気配で相手にプレッシャーをかけて重圧感を与えるというのだ。
これには流石に胡散臭さに耐えきれず、露骨に首を傾げてしまった。
更には挑発的なコメントをしてしまう。
「それは何ですか?気功ですか?」
「そんな大それたものじゃないが・・・」
と濁されつつ、こういうのをわかるようにならないといけないと言われ正直失望してしまう。
「こりゃわかんないですね・・・」
もう声に出てしまっていた。思った通りに言い放ってやったのだ。
だが同時に肯定的にも考えてみる。冷静になったほうがいい。
( ˘⊖˘) 。o(例えば5㎝の距離に相手がいて顔と顔が近い場合はどうだろうか・・・)
( ˘⊖˘) 。o(触れていなくても気配はプレッシャーを感じるのではないか・・・)
/*ずっと後になってシステマには触れずに相手をコントロールするノンコンタクトワークという技法があること知ることになるのだが・・・*/
「〇〇さん(女性)はわかってるぞ!合気道2段の達人だしねー」
マジで?そうなんか。そういう基礎的な心得があると気配も読めるのかもしれない。
尊敬の眼差しで見ていると、リーダーもこう被せて来た。
「ちなみにワシも空手の有段者だ。」
マジでか。他も知ってる上でシステマに流れてきているのだとしたら何等かの点でシステマには他にない何らかの魅力があるという説得力が増す。何にせよそのような武術集団だったとは驚きである。正直ただ者ではないとはこれっぽっちも思っていなかった。
もしかして全員そうなのか。肉付きの良いおっさんにも聞いてみる。
「何か他に武術とか格闘技やってらっしゃったんですか?」
「特に他は・・でも土日のシステマにも行ってまして。」
ここは比較的緩い感じで、もう1つの方はもうちょっと格闘技よりな感じらしい。
そっちの方が興味深かったけど家から結構遠そうだ。
その後、蹴りを織り交ぜながら打ち合ったりする。
この前やったような力を抜けば相手の力も抜けるというワークもやる。
またまた原理を聞いてみたが要領を得ない。
スポーツでも何でもそうだが、あるべき姿を理解して、仕組みを知った上で練習するのと何も考えずにただひたすら反復練習するのでは効率が違うと思うのでどうしても腑に落ちない。
「力学とかベクトルがどうこういう説明もあったりするけど、頭でわかっていても身体が動かないと使い物にならない」
この見解は皆さん一貫しているようだ。
最後にプッシュアップ(グーで腕立て伏せ)してから円陣を組んで本日の練習について所感を言い合って(サークルアップと言うそうだ)解散となった。
帰り際に、リーダーがシステマ入門という本を貸してくれた。