システマに初めて触れてからなんだかんだでもう5年以上になる。
だけど、どれくらいやっているの?という質問に答えるのは気が引ける。
当たり前だが毎日やってる場合の1年間と、週1、月1での頻度で練習している場合の1年間では習熟度が全然違うからだ。
スノーボードやらのスポーツ/レジャーにも当てはまるが、○○歴✖年というのは困った表現だなと常々思う。自分はやれても週1くらいだし、仕事が忙しかったりで月1くらいになることもしばしばある。そんなインストラクターでも何でもない自分だが、「数ある選択肢の中から何故システマをやっているんですか?」というのは割とよく聞かれる質問なので、ちゃんと答えられるように一度しっかり整理しておきたいと思いたった。
初めてのシステマに触れたときの記録はこちらを参照いただきたい。
正直まったくピンと来ていなかった感じの思い出となっている。
システマ体験記~1日目~
https://raysway.net/2021/01/29/experience-3/
何故システマなのか
元々はロシアの軍隊格闘術とされているが、世間一般に普及しているもの(リャブコ式システマ)は当時のものとは別物だと思われる。基本的にディフェンス技術しか開放されておらず、相手を傷つけるための技術は扱われていない。また、創始者ミカエル・リャブコ氏は存命であり、システマは今も尚、日々アップデートされ進化し続けている。
システマを護身術習得の意味でやっている人の他に、ヨガやマインドフルネスのような健康法としてやっている人もいる。そのようにシステマは他格闘技とは違う緩さや自由さがあるのは間違いないだろう。自分の中ではどうだろうか。何故システマをやってるのかを考えてみた。
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身体操作法としての驚きや発見がある
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形(カタ)がなく本質的な技術である
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物理的側面だけでなく精神的側面もある
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無理なく楽しみながら続けられる
1.身体操作法としての驚きや発見がある
基本的に筋力に頼らず、呼吸や姿勢、体幹や腱など構造の力を使った身体の動かし方になる。それにより楽にとんでもないパワーを生み出すことができたりする。これは外から見てもわかりづらく体験しないと実感できない。その理由として、同じ動きでも意識の向け方の違いによって、動作の質や相手に与える影響が変わるということも1つ挙げられる。
YOUTUBEなどのインターネット動画では、弟子のような関係者が忖度しているヤラセに見えてしまうのが辛いところ。その特殊な身体操作技法は、すべてシステマユニークの技術かというとそうでもなく、日本の古武術や合気道でも同じような身体操作法を提唱していたりする。
重いものを軽く持ったり、疲れにくい歩き方、踏み込まないことで、逆により早く動く方法など色々調べると出てくるが、共通する要素があって驚かされる。これらの身体操作法のコツを掴んでおくことで、バスケやマラソンなどのスポーツに活かすこともできるし、買い物の際に楽に荷物を運んだりすることもできる。あるいは転倒しても怪我しにくくなったり、社会生活での疲労やストレスを軽減させるなど、日常生活においても応用が効くのも大きな魅力だ。
2.形(カタ)がなく本質的な技術である
システマは試合や段位がないため、競技向けではなく実用的なシチュエーションを視野に入れているという特徴がある。武器による攻撃への対応、一対多(相手が複数いる場合)での動き方などはその一例になるが、理想の状況だけでなく最悪の事象を想定している点も面白い。
武術や格闘技では攻撃を避ける練習を当然行うわけだが、システマでは攻撃を完全に避けることは不可能だと考え、攻撃を受けた後の練習もやる。
何を言っているのかと言うと、ナイフで刺されないようにする練習だけでなく、刺されたとしてもうまく致命的ダメージを避けるような刺され方をする練習もやるイメージだ。後ろからヤミ打ちなどされた場合でも殴られたところからのサバイブを現実的なものとして考慮する。
もちろん形(カタ)があることによるメリットは言うまでもなくある。
反復練習が可能になり、こう来た場合はこうするなど身体にパターンを覚え込ませることにより自然と身体が動くようになるかもしれない。ある水準までの上達も効率的にできそうだ。
ただやはりデメリットもあり、パターン外のインプットに対しては反応できず実戦(試合や競技外の現実世界でという意味)使い物にならなくなる。使うようなシチュエーションは極稀だし、そのようなハメになってほしくもないが…。
軍隊向けシステマ、カドチニコフ式システマなんかは短期間である水準の兵士を生み出す必要があるために、形(カタ)のような一定のフォームを反復練習することはあるようだが、少なくとも日本に普及しているリャブコ式システマでは、4大原則(呼吸する・動き続ける・リラックスする・姿勢を保つ)から生まれる根本的な原理原則を習得することで、自由で自然な動きによって快適な状態のキープを目指すというコンセプトとなっている。
システマと他格闘技の違いとして、OSとアプリケーションの違いだと語られることがある。
空手や合気道などに存在する形(カタ)はアプリケーションの部分に位置付けられ、システマで扱う身体操作法は、そのアプリケーションが動くためのベースとなるOS(オペレーションシステム)のイメージである。
身体の動かし方が全く異なっているので、異種格闘技出身者、武道の達人ですら初めてシステマに触れたときに驚きを隠せない不思議体験のリアクションが飛び出すことになる。古武術なんかは逆に共通点の多さについて驚きのリアクションを見せるケースも見られるようだ。
3.物理的側面だけでなく精神的側面もある
社会的生活を営む限り、対人関係においてのストレスは避けられない。
そのような精神的な衝突に対する向き合い方にも応用が効くところがある。
大事なプレゼンや交渉相手との議論の最中、呼吸は浅くなり身体中にテンションが入って硬直し、思考が思うようにできなくなってパフォーマンスが落ちてしまったりすることがある。落ち着いてゆっくり深く呼吸するだけで随分と状況は変えられる。落ち着くと相手と真っ向からぶつからないようにいなす余裕も生まれてくるはず。
“柔よく剛を制す”である。
「激流に対して立ち向かえば即ち飲み込まれて打ち砕かれる。」システマを通して北斗の拳のトキのようなしなやかさでものごとに対峙する訓練ができるのである。
4.無理なく楽しみながら続けられる
他の格闘技よりも平均年齢が高いと思われる。ご高齢の方でも無理なく練習を続けることができる。そもそも筋力に頼らない動きを目指しているのもあるし、相手がどうとかよりも自分自身と向き合う側面が強いため、自分のペースでやることになるからである。
靭帯を損傷したり骨折したりなどの怪我もほとんど聞いたことがない。
呼吸を使った練習メニューは、ジョジョに出てくる波紋の修行みたいな奇妙な練習もありそれ自体が面白い。中には理解できない意味不明なものもある。
ただ、練習後の帰り際には、練習前の来た時よりも身体が楽になっているため、健康に良いんだなという実感が湧く。日頃のデスクワークで凝り固まった身体をほぐすのにちょうどよいエクササイズになる上、世知辛い世の中をサバイブするためのノウハウも習得できるのであれば最高ではないか。
ちなみにどこでやれるんだという疑問については、だいたいどこでもできると言える。システマは非常にマイナーな武術にも関わらず、意外なことに都道府県ごとに1つくらいはシステマの団体が存在していたりする。
システマグループ 全国一覧
https://ameblo.jp/systemayuki/entry-12581176361.html
以上、他にも述べて置くべきことがあるかもしれないが、自分がシステマを続けている理由について思いつくことを書き綴ってみた。