バックパッカーの聖地、メインバザールを求めて
公共交通機関が見つからない
すぐに朝になった気がした。
朝に弱いはずの自分。しかも昨夜はだいぶ遅くまで起きていたし疲弊していたはず。
なのに朝早くに目が覚めてしまった。目覚めた瞬間に手荷物の無事を確認する。
Sは?
2つ以上連続して空いている座席に寝転んだのでSは少し離れたところで寝ていた。起き上がるとすぐに眼鏡をかけてSのところまで歩く。Sは座りながら毛布に包まって眠っている。こんな冷房でキンキンに冷えた部屋に居続けたら風邪どころじゃなくなる。ぶっ倒れて病院行きだ。すぐに安宿街を目指さねばならない。
Sを起こすと、グズつくことなくすぐに目を覚ましてくれたので、ささっと部屋を出た。
目的地は安宿街。ニューデリーにおけるバックパッカーの聖地的な安宿街、メインバザールを目指す。メインバザールは、またの名をパハールガンジと呼ばれ、丘の市場という意味らしい。歴史は古く、ムガル帝国の時代から存在したとか。
外は雨がしとしと降っていてじめ~~~っとしている。人は昨夜から減っていない。道端に無数の人間が横たわっている。その中には小さな子供もいる。この人たちはここで何をしているのだろう。旅行者ではなさそうだし。ここが家なのか?
「ジャパーニー!!」
早速来た。
「カムカム!ノープロブレム!」
胡散臭い。
限りなく胡散臭い。
「ウェアルゴーイン?」
「メインバザール」
とっさに答えてしまう。
「カム!フォローミー!!!」
「タクシー!ノータカイ!」
鬱陶しい。
バス停の場所を尋ねると、バスなどないと言われた。
いい加減にしろと思ったが何も言わずに歩き続ける。雨が冷たい…。
ゴボッゴホォッ
Sの状態がやばそうだ。道端の人たちにバス停はどこかと聞いたがどの人も違うことを答えてきた。その方向に行っても何もないし、看板を探してもよくわからない。地球の歩き方にも載っていない。おかしい。空港なのに列車やバスが何故ないのだ。あるはずだがいくら歩き回っても見つからない・・・
しばらく彷徨った後、ついにバス停らしきものを見つけたが、全く来る気配がない。もう体力が限界にきている。公共交通機関にこだわるのはやめにしよう。そう思えるには十分だった。
そうだ、タクシーを使おう
タクシーがよい。しかし地球の歩き方にタクシーでのトラブル事例の数々が記載されているため、タクシー選びも肩に力が入ってしまう。
まず向こうから近づいてくる輩はダメだ。話にならない額を吹っ掛けてくる。
次にメーターを作動させないやつもダメだ。あとあとトラブルになるだろう。
聞いてもいないのに首にぶら下げた優良ドライバーライセンスをアピールして乗れとせがんでくるやつや、ガイドツアー込みだとか営業をかけてくるドライバーも後を絶たない。
ダメなやつばっかりじゃないか・・・。
タクシーに乗れない。2人は絶望感に包まれる。
・・・そんなとき男がやってきた。
「ハローマイフレンド」
ここからは少し長くなるので、、、
インドで空港からスラム街に連れて行かれた話で語ることにする。
マクドナルドで束の間の休息
何とか無傷でスラム街を脱出することができたわけだが、それにしてもなんと殺伐としているのだろう。こんなのがインドなのか?タオルで身体に付いた水分を拭き取り座り込んだ。早くコーヒーが飲みたい。とにかく暖かいものを・・・。雨宿りしている女性が居たので道を聞いてみたが、首を振られて無視されてしまった。なんで?男と会話しちゃいけなかったりするのか?などと勝手に色々と想像してしまう。
そうこうしているうちに開店した。びしょ濡れの荷物を引きづってテーブルを確保する。周りには誰も居ない。カウンターでメニューを眺めると、どれもこれも見たことがないメニューが表示されている。全部カレー味のような気もしてきたので、ポテトとコーヒーを注文する。結構高い。全然安くないのである。インドのような物価の安い国ではマクドナルドのような外資系の店というのはかえって高くなってしまうのだろう。
「うおー、コーヒーうまー」
暖かった。冷えた身体に温もりが染み渡る。
そうだ!ここの店員ならさすがに英語は通じるだろうしいい加減な人ではないだろう。
元気も出てきたし、勢いよく道を尋ねてみた。
店員はカウンターから出てきて壁に貼ってある地図の説明をし始めた。手持ちの地図との比較もしながら話を聞く。おおー、こいつとは話ができそうだ。道、聞き放題である。
ふむふむ。なるほど。ここはコンノートプレイスからそう遠くないようだ。聞くべきことは聞けたので礼を言って外へ出た。しかしインドを決して舐めてはいけないと思ったので、さっきのセキュリティガードにコンノートプレイスの方向はこっちでいいよなと聞いてみる。
すると首を傾げられた。言葉を変えて質問するとYESと言っているが、念押し確認するとニヤニヤしながら首を傾げてわかんねーって感じである。もういいやと諦めて北へ向かった。